


「初めまして、お父さん」。 元ヤンでホストの沖田大和の前にある夏の日、息子を名乗る家出少年が現れた。最初は疑った大和だが、進の名字と母親の名前を聞き、かつての恋人が、妊娠を告げることもなく産んだことを知る。進と暮らすために、夜の商売であるホストを辞めて宅配便のドライバーに転身する大和だったが、荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続で......!? ぎこちない父子のひと夏の交流を、爽やかに描きだす。文庫版あとがき&掌編を収録。 『ウィンター・ホリデー』『ホリデー・イン』へと続く人気シリーズの第一作。
宅配便に、ものすごくお世話になっています。仕事関連の書類に始まり、飲料水やネット通販のあれこれ。長めの取材ではスーツケースを送ったり、ついでに現地からお土産の段ボールも追加したりして。
よく利用しているうちに、配達員の方と顔見知りになりました。我が家の近くは数名の方で同じブロックを担当しているらしく、やがて私はその全員と会釈をするようになります。すると道で「今日は荷物ありますよ。午後在宅ですか?」とか「冷凍便、さっき持ち帰っちゃったんで持ってきますね!」など声をかけていただけるようになりました。そしてそこでふと思ったのです。
「宅配便の配達員さんって、街の人々のことをものすごく知っているのでは?」
毎日同じブロックを担当していれば、どこにどんな人が住んでいるのか、いつ在宅で留守がちなのは何曜日かなど、さまざまな情報を知る機会があるでしょう。個人情報なので彼らは決して口にしませんが、自分の中には独自の情報ルートマップがあるものと推測しました。
そんな人たちを主人公にしたら、面白いお話ができるかもしれない。それが『ワーキング・ホリデー』を書きはじめたきっかけです。なので作中の配達員さんには、それぞれモデルがいたりします。中でも「リカさん」は今現在も近所の担当なので、もはや昔なじみの雰囲気すらあったりします。
さらにお話を作るにあたって考えたのは、「そこから遠い場所にいる主人公」でした。元ヤンでホスト。ケンカっ早くて雑な性格の主人公に合わせたのは、生真面目で世話焼きの小学生男子です。二人がぶつかりあいながら、周囲の人々に支えられて進んでいく姿を一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
ちなみにタイトルは「働くことに向き合う」と「急に現れた子供との、休日のような日々(夏休み)」を合わせたイメージでつけました。「外国行ってないじゃん!」と思われたら申し訳ありません。でもたぶん、外国よりも知らない場所に連れて行くよ。
1969年東京生まれ。2002年『青空の卵』で《覆面作家》としてデビュー。同作に続く『子羊の巣』『動物園の鳥』が「ひきこもり探偵」シリーズとして人気を博す。日常の謎系ミステリのみならず青春小説の書き手としても注目を集める。