第173回芥川賞・直木賞は、両賞ともに「該当なし」となりました。
どちらも「該当なし」となるは、1997年度下半期の第118回以来27年半ぶりで、史上6回目。
惜しくも今回受賞はなりませんでしたが、候補作はいずれも傑作ばかり! この機会にぜひご一読ください。
日本に逃げたアメリカ人と、かつてアメリカに憧れた日本人。
2人の人生の軌道<トラジェクトリー>がすれ違う時、何かが起きる――
英会話教師として日本で就職したブランドンは、アポロ11号の月面着陸計画の記録を教材に、熟年の生徒・カワムラとレッスンを続ける。
やがて、2人のあいだに不思議な交流が生まれていく。
アメリカ出身の作家が端正な日本語で描く、新世代の「越境文学」。
ニューオーリンズにフォークナーと小泉八雲の残影を見る珠玉の短編「汽水」を併録。
「おれ、死んでもうた。やから殺してくれへん?」
彼の胸に耳を当てた。するとたしかに心臓が止まっていた――。シェアハウスに住まう2人と1羽の文鳥。ひとつ屋根の下、同居人の蓮見から初瀬にもたらされた、気軽で不穏な頼み事。
夢と現、過去と現在、生と死。あちらとこちらを隔てる川を見つめながら、「わたし」が決断するまでの55日。