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第4回PUSH!1st.「人間はどこまで耐えられるのか」

2024.03.01
Push!1st.

人間は、思った以上に頑丈だ。

人間はどこまで耐えられるのか

フランセス・アッシュクロフト/矢羽野薫:訳/河出書房新社/1,100(税込)

"死ぬか生きるかの極限状況を科学する!"
人は現在、人間が生きるには高すぎる高度を平然と飛行機で行き来し、凍える水の上を船で進む。または減圧症の危険を冒してスキューバダイビングをし、高山病と闘いながらエベレストに挑む。
隣合わせの命の危険を意識せずに、または危険が伴うがゆえに、たびたび人間は肉体の限界を超える環境に身を置く。どのくらい高く登れるか、どのくらい深く潜れるか・・・人間は生物としてどこまで耐えられるのか。肉体的な「人間の限界」を最新の研究成果を駆使して分かりやすく解説する驚異の書。

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翻訳者/矢羽野薫さんのコメント

どうやら私たちは「限界」が好きらしい。「どちらが長く我慢できるか」は子供の遊びの定番だ。マラソンやゴルフをすれば、自己最高という名の限界を知りたくなり、人類最高という名の限界に挑む人々に魅了される。海や山で遭難した人が無事に生還したと聞けば、彼らのサバイバル精神に舌を巻き、自分が過酷な自然に放り出されたらどうなるだろうと想像する。自分には無理だと思うから限界を見てみたいと思い、自分ならどこまで耐えられるかという限界を知りたくなる。
この本は「極限の自然環境で人間はどのように生きのびるのか」に注目し、生理学的なリミットを探る。第1~4章は自然界の極限として、高さ(登山)、深さ(潜水)、暑さ、寒さの限界を追求する。第5~7章は人間という種の極限として、速さ(短距離走と長距離走)、宇宙空間に飛び出した人体の変化、そしてエクストリーム・ファイル(極限微生物)の生態を紹介する。
強靭な精神力や超人的な体力で極限状態を乗り切るサバイバーもいるが、体内の生理現象は基本的に変えられない。しかし何もしなくても、体は自然に調整して順応する。人間の体は驚くほどうまくできているのだ。著者はそんな人間の体の神秘を、身近な例や興味深いエピソードを織り交ぜて描きだす。人間の限界を疑似体験しながら(身につまされながら)、自然の驚異と人間の底力を味わってほしい。
科学者は昔から、人間の限界を解き明かそうと奮闘してきた。実験が必要となれば自ら体を張り、高さや深さ、暑さ、寒さの限界に飛び込む。そして限界を証明できたと思うたびに、常識があっさりくつがえされて新たな限界が生まれる。彼ら科学者のロマンと野心(と挫折)も楽しめる一冊だ。
私たちの血管や心臓でも、科学の世界でも、小説よりはるかにスリリングなドラマが繰り広げられている。

著者来歴

1952年生まれ。イギリスのオックスフォード大学の生理学部教授で、インスリンの分泌に関する研究の第一人者。ロイヤル・ソサエティーの数少ない女性フェローに名を連ねる。

翻訳者/矢羽野薫さん

翻訳家。慶応大卒。『世界記録はどこまで伸びるのか』等訳書多数。

〈開催期間:2012年7月2日(月)~8月12日(日)〉
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