命をかけて守るべき人が君にはいるだろうか。
「彼女を守る。それがおれの任務だ」傷だらけで、追手から逃げ延びてきた少年。彼の中に忘れていた熱いたぎりを見た元警官は、少年を匿い、底なしの川に引き込まれてゆく。やがて浮かび上がる敵の正体。風化しかけた地下鉄テロ事件の真相が教える、この国の暗部とは。出版界の話題を独占した必涙の処女作。
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『川の深さは』は、福井さんが初めて書かれた小説です。
江戸川乱歩賞受賞作や、映画化もされて皆さんご存じの『亡国のイージス』よりもあとに発表されている経緯は、文庫版の解説で触れているのでそちらに譲りますが(豊崎由美サンの解説、心にズドンと残る名解説です!)最初の作品だからというわけではないのでしょうが、わたくしにはよい意味でゴツゴツしていて、読了後、脳内に登場人物たちの言動が残ります。
40代の元暴力団対策の刑事だった主人公が不器用なのに、カッコいいんです。
傷だらけで逃げてきた少年とその少年が守る女性をかくまってから、この元刑事の警備員が決死の選択を迫られ、自嘲気味に語る言葉は、オヤジを意識し始めた男性にはグサリと刺さります。あえて言い切りましょう、この元刑事の言動にグッとこなければ、男である資格はないと。とは言っても、男性向け小説ではありません。守られる女性もゆたかに描写されていて、どの年代の女性にも「あるある」とうなずくことがあると思います。
ネタばらしになってしまうので、すべてをご紹介できないのがもどかしいのですが『川の深さは』というタイトル、読んだあとはだれかに説明したくなりますよ、絶対に。
1968年生まれ。私立千葉商科大学中退。'98年『Twelve Y.O.』で 江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。'99年刊行の『亡国のイージス』で 大藪春彦賞、日本冒険小説協会大賞、日本推理作家協会賞をトリプル受賞。 『人類資金』は'13年に映画化され、原作のみならず脚本も手掛けた。