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第14回PUSH!1st.「みんな邪魔」

2024.03.01
Push!1st.

女の業はかくも深いのか――。

みんな邪魔

真梨幸子/幻冬舎/838円(税込)

少女漫画『青い瞳のジャンヌ』をこよなく愛する"青い六人会"。夫のDVに悩むエミリー、バツイチ子持ちのシルビア、実母の介護に追われるミレーユ、セレブ妻のジゼル、会のアイドルガブリエル、そしてリーダーのマルグリット。各々悩みは抱えつつ、六人集まれば噂話と妄想を楽しむ中年女性たち。しかし――あるメンバーの失踪を機に正体を露わにし始める。飛び交う嘘、姑息な罠、そして起こった惨殺事件。辛い現実から目を背け、ヒロインを夢見る彼女たちの熱狂が加速するとき、新たな犠牲者が。殺人鬼より怖い平凡な女たちの暴走ミステリ。

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幻冬舎 第三編集局編集第一部/宮城晶子さんのコメント

『みんな邪魔』。実は単行本刊行時は別のタイトルでした。その名も『更年期少女』。ギョッとするタイトルですが、この小説を一言で言いますと、まさしく、それにつきると言っても過言ではありません。
何歳になろうが、結婚しようが、はたまた子供がいようが、社会的地位があろうがなかろうが、女たちは心の中ではずっと「夢見る少女」なのです。昨今、"女子"という言葉が流行っていますが、本書を読んでいただきますと、「女は女子など生温いものではなく、筋金入りの永遠の少女である」と認識していただけると思います。
作中、様々な悩みを家庭や心や体に抱えている元少女たちが登場します。DVに悩み、親の介護に悩み、思い通りに育たない子供や永遠に分かり合えない旦那に悩み諦めています。そんな彼女たちを支えるのが、『青い瞳のジャンヌ』----少女漫画です。きっとそれは少女漫画でなくても本当は良かったのかもしれません。彼女たちは、自分たちが今の自分(現実)から一時でも目を背け、熱中し没頭できる"何か"を求めていただけなのかもしれません。
女たちは、生まれたときから、自分の物語の主人公(ヒロイン)であるはずです。どこで狂ったのか自分が主人公のキラキラした物語を生きることができなくなった彼女たちの人生は予定より大きく歪んでしまいましたが、彼女たちはそれを必死で軌道修正しようとしているのです。----たとえ誰かを殺してでも。
「イヤミス」「女のドロドロ」。真梨幸子さんの小説イメージをそう思ってらっしゃる方も、決して間違いではありませんが、登場する女たちは、みんな、誰かを憎んでいがみ合っているわけではありません。ただ「自分のことだけしか考えていない」のです。女同士ドロドロしている暇は彼女たちにはありません。美しい主題歌が流れる、自分がヒロインの物語では「夫も子供も友達だって、みーんな邪魔」なのです。
一方、読んでいて感じるのは、「女たちの熱狂」です。「ただヒロインになりたいだけなのに」。という、あまりにも率直で無邪気な熱狂は、アッパレと手を叩きたくなるほどです。むしろスポ根漫画を読んでいるような、プロジェクトXを見ているような、やる気と根気に満ち溢れています。「ドロドロ」や「イヤミス」では片付けられない、ある種の爽快感こそが、真梨ミステリの醍醐味でもあるのです。
女性のみなさん。あなたは数年後、どの「元少女」になっているでしょうか。男性のみなさんも、「みんな邪魔」と子供もろともに捨てられないように、奥さんを大事にしてください。
笑って怖がって最後にひっくり返される、大エンターテインメント。読んだら人に絶対薦めたくなるこの小説は「イヤヨイヤヨモスキノウチ」ミステリ間違いなしです。

著者来歴

  • (C)嶋田礼奈

一九六四年宮崎県生まれ。多摩芸術学園映画科卒業。二〇〇五年『孤虫症』で第32回メフィスト賞を受賞しデビュー。『殺人鬼フジコの衝動』の文庫が累計50万部を超える大ヒットに。一躍"イヤミス"の旗手となる。著書は『女ともだち』『あの女』『私が失敗した理由は』など多数。

〈開催期間:2016年9月2日(金)~ 10月13日(木)〉
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