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第30回PUSH!1st.「殺し屋、やってます。」

2024.03.01
Push!1st.

殺し屋が名探偵?
"日常の謎(ターゲット)"を掘り下げる7つの舞台をご堪能あれ!

殺し屋、やってます。

石持浅海(いしもち あさみ)/文藝春秋/803円(税込)

ひとりにつき650万円で承ります。
コンサルティング会社を経営する富澤允。普通に社会生活を送っているが、彼は1人につき650万円の料金で人を殺す、殺し屋だった。依頼は引き受けられるかどうかを3日で判断。引き受けた場合、原則2週間以内に実行。ビジネスライクに仕事をこなす富澤だが、標的の奇妙な行動がどうにも気になる。
なぜこの女性は、深夜に公園で水筒の中身を捨てるのか? 独身のはずの男性は、なぜ紙おむつを買って帰るのか? 任務遂行に支障はないが、その謎を放ってはおけない。
殺し屋が解く日常の謎シリーズ、開幕!

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著者/石持浅海さんのコメント

物語を創るとき、「ミステリの約束事をひっくり返す」、「相反するものを結びつける」ということをよくやります。
前者ですと「密室を『開けない』」とか「嵐の山荘に『通う』」など、ミステリファンの方々が怒りだしそうな話を書いてきました。そんな展開になってしまう理由をうまく説明できれば、目新しくて面白い作品に仕上がります。
後者ですと、「『玩具』と『生死を賭けた冒険』」や「『理性を吹き飛ばす官能描写』と『冷静な謎解き』」などといった取り合わせを試みました。そういった組み合わせの中でも、最も相容れない組み合わせが「『殺人』と『日常の謎』」です。
お前は何を言っているのだ。殺人が起こらないからこその日常の謎ではないか。
みなさん、そう思われることでしょう。解決方法は簡単。殺人が起こっても、その謎を解かなければいいのです。殺人は起こる。解かれるのは日常の謎。そんなことはあり得るのか。僕は殺し屋を探偵役にすることを思いつきました。
かといって、普段の生活で目にする小さな謎を解くのであれば、殺し屋である意味がありません。殺し屋を探偵役にする以上、依頼を受けて標的を殺害するという仕事上の謎であるべきです。しかし自分が殺すのだから、殺人そのものに謎は存在しません。存在するのは、標的に関する謎であり、依頼人に関する謎になります。
そんなことを考えていたら、七つの物語ができました。それを一冊にまとめたのが、今回「PUSH! 1st.」に選んでいただいた『殺し屋、やってます。』です。殺し屋稼業で謎解きをしているため、本格ミステリでありながらお仕事小説の側面もある、楽しい本になっていると自負しています。
しかも、この話には続きがあります。殺し屋探偵は健在で、『殺し屋、続けてます。』という本に再登場します。もう一人の殺し屋も登場して、かなり賑やかな本になっています。一冊目を読んで気に入ってくださった方は、ぜひ。

著者来歴

1966年愛媛県生まれ。九州大学理学部卒業。2002年『アイルランドの薔薇』で単行本デビュー。
04
年『月の扉』が日本推理作家協会賞候補、06年『扉は閉ざされたまま』が本格ミステリ大賞候補。
『ブック・ジャングル』『Rのつく月には気をつけよう』など著書多数。

〈開催期間:2022年1月1日(元日)~ 2月11(金・祝)〉
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