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第34回PUSH!1st.「私の命はあなたの命より軽い」

2024.03.01
Push!1st.

「命の重さ」に違いはあるのでしょうか?
違いなんてあってはいけないはずなのに。
引き込まれる違和感の世界。
......そして、最後の1ページが。

私の命はあなたの命より軽い

近藤史恵/講談社/682円(税込)

東京で初めての出産をまぢかに控えた遼子。夫の克哉が急に海外へ赴任することが決まり、遼子は大阪の実家に戻って出産をすることになった。そこで実家に帰ると、両親と妹・美和の間に、ほとんど会話がないことに気がつく。さらに父は新築したばかりの自宅を売却までしようとしていた。不穏な空気が流れる実家で、出産への不安と家族への不信感があふれ出る......。やがて明らかになっていく、遼子の家族を襲った衝撃の出来事とは?
命の重さを決めるのは誰なのか――。著者渾身の戦慄ミステリー。

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著者/近藤史恵さんのコメント

 長く読み継がれる小説もあれば、あっという間に古くなっていく、そんな小説もあると思います。『私の命はあなたの命より軽い』を書いているとき、私はずっと考えていました。この小説が世に出て、そしてあっという間に古くなってしまえばいい、と。
 五年か十年経ったあと、小説の中で起こったことや、登場人物たちの行動や考えを読んだ多くの人たちが「昔はこんなふうに考えてたの? おかしくない?」「ちょっとありえなさすぎる」と思うような世界になってほしい、と。
 長く読み継がれる小説にだけ価値はあるのではない。あっという間に古びていく小説にも、ちゃんと意味はあるのだと思っています。
 でも、この本が出て五年以上経ち、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」ということばを、耳にすることは増えたけれど、女性の身体をめぐることについては、まだほとんどが停滞したままで、むしろ、前より悪くなったことさえいくつもあります。
 まだ決定権は、えらい人たちの手に握られたままで、彼らは当事者である女性の声に耳を貸そうとはしない。どんなに声を上げても、なかったことにされる。
 そんな中、ブックファーストさんのPUSH!1st.に『私の命はあなたの命より軽い』を選んでいただけたことは、なんだか光が差し込んだような気持ちになる出来事でした。
 この小説に出てくる人の中には、読者が見て怖いと思うような行動を取る女性もいます。でも、彼女を怖い存在にしているものは、安全地帯に隠れたまま、ただにやにやと笑っているのです。

著者来歴

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学卒業。'93年『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2008年には『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞を受賞し、同作は第5回本屋大賞2位にも選ばれた。他の著書に『ときどき旅に出るカフェ』『マカロンはマカロン』『歌舞伎座の怪紳士』などがある。

〈開催期間:2023年4月28日(金)~ 6月8日(木)〉
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