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第35回PUSH!1st.「明るい夜に出かけて」

2024.03.01
Push!1st.

どこまでも暗く孤独な夜を生きる若者が人との繋がりによって明かりの灯る夜へと導かれていく......
悩み抜いた先に見える灯火を貴方も見つけていただきたい。

明るい夜に出かけて

佐藤多佳子/新潮社/825円(税込)

人間関係のトラブルがきっかけで、逃げるように大学を休学し、一人暮らしをしながらコンビニバイトを始めた富山。相変わらず人間関係は苦手なまま。深夜ラジオのリスナーであることは変わらない。だがコンビニでバイトをするうちに、バイトリーダーでネットでは「歌い手」として活躍する鹿沢、同じ深夜ラジオ番組のヘビーリスナーの佐古田、旧友の永川との交流を通し、世界が鮮やかな色を取り戻していく。
実在した深夜ラジオ「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」を織り込み、若者たちの孤独と繋がりを温かく描いた青春小説。

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著者/佐藤多佳子さんのコメント

タイトルは、まだ二十代前半の習作時代につけていたもので、都会の夜の中をさまよう少年少女が出会い、交流するというイメージだけで、ストーリーを作れないまま、とん挫してしまった。よくある設定だと思うが、こうした作品の根っこ、元みたいなものは、すごく貴重で替えがきかない。自分自身に深く根差しているし、抜き差しならない必然性がある。
本作に個性を与えた要素は、むしろ、後付けのものだ。ラジオ、主人公の病的なコミュニケーションの悩み。執筆稼業を続けるうちに、色々な要素を融合させ、成型するスキルが身についたように思う。
創作は、いつの日も、よくわからないまま、やっている。スキルが身についても、なお、本当によくわからない。書きたいものを、必死でぼんやりと追いかけて、言葉を探して、積み上げて、完成させる。
富山が来て、佐古田が来て、鹿沢が来て、金沢八景がいいらしいとなり、アルコ&ピースのラジオが面白すぎるから、もうそのまま使ってしまえとなる。書き上げてから、これは諸方面に責任がとれるものだろうかと冷や汗をかく。幸運にもOKとなり、世に出て、大きな賞までいただき、たくさんの方々に喜んでいただけた。ラジオドラマになり、演劇にもなった。

著者来歴

1962年、東京生れ。青山学院大学文学部卒業。1989年「サマータイム」で月刊MOE童話大賞受賞。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で1998年度日本児童文学者協会賞、路傍の石文学賞を受賞。『一瞬の風になれ』で2007年に本屋大賞、吉川英治文学新人賞、『明るい夜に出かけて』で2017年に山本周五郎賞を受賞した。
著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『ハンサム・ガール』『夏から夏へ』『第二音楽室』『聖夜』など。

〈開催期間:2023年8月15日(火)~ 9月25日(月)〉
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