2011/06/10更新

小暮写眞館

宮部 みゆき

講談社/1,995円(税込)

寂れた商店街のとある写眞館をとある家族が買い取り、暮らし始めます。写眞館を自宅として…。主人公はこの家族の息子さん。この写眞館に越して来てから出会って行く人々。連作短篇で進んで行く物語。1冊としてはかなりボリュームがありますが、思ったよりもさらりと読めてしまうかもしれません。しかし、一遍一遍は長編を読んだかのような読み応え。現代物が久しぶりだった宮部みゆき作、優しくなれる、ゆるやかミステリーです。

(銀座コア店/文芸書担当 清水のおすすめ 2011.06.10)

光媒の花

道尾 秀介

集英社/1,470円(税込)

山本周五郎賞受賞作。少し前の作品ですが、連作短編集で読み易くおススメです。それぞれの主人公が個々に違った行き詰まりを持っている。小さな嘘、悲しい嘘、寂しさや悲しみの先にある光景。それは“幸せ”とは違った、でも一握りの幸福への一筋の光を見るかのように感じる。人は弱いから優しくなれるのか…考えさせられる作品です。

(銀座コア店/文芸書担当 清水のおすすめ 2011.06.10)

わたしの彼氏

青山 七恵

講談社 /1,680円(税込)

美しく、怖い姉3人にかわいがられて育った鮎太郎は大学2年生。天真爛漫で繊細で美男子の彼は、いつも恋愛の台風の目。美男ゆえに起こる女難の数々・・・。女たちはみな彼に恋をする。けれどいつも、最後には鮎太郎が振られてしまう。恋というものの不思議さと真っ当さ。恋する人間の愚かさ、愚かさゆえの愛おしさ。面倒くさくても、うまくいかなくても、人に恋することはすばらしい、と思える1冊です。

(蛍池店/文芸書担当 鈴木のおすすめ 2011.05.10)

ある小さなスズメの記録

クレア・キップス:著/梨木 香歩:訳

文藝春秋/1,500円(税込)

第二次世界大戦の戦雲たち込めるロンドン郊外で、瀕死の1羽の小スズメが老婦人に拾われた。老婦人の献身的な愛に包まれて育った小スズメは、やがて戦禍の中の多くの人々に愛と希望を与えていく・・・。1953年、イギリスで刊行し、世界各国でベストセラーとなった名著が、梨木香歩さんの翻訳で復刊しました。本当に小さな、小さいけれど力一杯生きたスズメと、そのスズメを守り育てた作者との交流の記録には、命というものの尊厳と輝きが満ち溢れています。装丁もすばらしく、プレゼントとしてもおすすめの1冊です。

(蛍池店/文芸書担当 鈴木のおすすめ 2011.05.10)

民宿雪国

樋口 毅宏

祥伝社/1,470円(税込)

丹生雄武郎という国民的画家が死去した。彼はその栄光とは裏腹に、新潟の小さな村の民宿の主としてその生涯を閉じたのだ。死後、その数奇な人生が詳らかに語られる。昭和史という一つの軸を巧みに用いて、丹生雄武郎という男の壮大な虚飾の人生が、これでもか、という裏切りの展開に騙されながら、読ませます。これはエンターテイメントか、はたまた実験小説か?全くの新感覚小説として話題を呼んでいる1冊です。

(蛍池店/文芸書担当 鈴木のおすすめ 2011.05.10)