PUSH!1st ブックファーストの一押し本

「ビオレタ」

絶対読得宣言!

ビオレタ

“自分にとって
   大切なもの”

もう、あなたには見えていますか?
寺地はるな 著
ポプラ社/726円(税込)

婚約者から突然別れを告げられた田中妙は、道端で大泣きしていたところを拾ってくれた菫さんが営む雑貨屋「ビオレタ」で働くことになる。
そこは「棺桶」なる美しい箱を売る、少々風変わりな店。何事にも自信を持てなかった妙だが、ビオレタでの出会いを通し、少しずつ変わりはじめる。

人生を自分の足で歩くことの豊かさをユーモラスに描き出す、心のすきまにしみこむ温かな物語。

作家寺地 はるなさん

<著者来歴>

1977年 佐賀県生まれ。大阪府在住。
2014年 『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞し、翌年デビュー。
2020年 『夜が暗いとはかぎらない』で、第33回山本周五郎賞にノミネートされる。他の著書に、『水を縫う』『ほたるいしマジカルランド』などがある。

©2021 土居麻紀子

【著者】寺地はるなさんのコメント

自分以外の人がみんな自分よりずっと強くて正しいように思えて、なにをするにもこわくてしりごみしてしまう、という時期がありました。
『ビオレタ』が最初に本になった時、取材などで「どうしてこういう話を書こうと思ったんですか」「テーマはなんですか」と、ほんとうにたくさんの人から訊かれたのですが、いつもうまく答えられませんでした。
強くも正しくもない人に寄り添いたかった、というのはすこし違う気がしています。
もしかしたら、わたしたちが生きていくうえで「強い」「正しい」と感じているものは、ほんとうにそういうものなのだろうか? と問いかけたかったのかもしれません。
主人公は、世間的な価値観でいうと「どうしようもない人」ですが、どうしようもない人がちゃんとした人たちに出会って成長することを肯定するような話は書きたくないなという気持ちだけは強くありました。
冒頭に書いた「自分以外の人がみんな強くて正しいと思っていた」のは若い頃の話です。三十歳を過ぎてから「この世に生きている人は、みんな程度の差こそあれ、ひとしくどうしようもない部分を持っているんだな」と知るようになりました。「みんな違ってみんないい」ではなく「みんな違ってみんなだめ」です。だめなりに、相互に影響を与え合いながら、なんとか共存していけるような世界になったらいいな、といつも思ってます。
小説を読むということはわたしにとって、自分が見たことがない世界、経験したことがない人生、あらゆる未知の感情にむかって手を伸ばすための手段です。
書くことも同じです。自分の中ですでに出た答えを誰かに教えるために書いているわけではありません。
常に答えを求め続けています。答えそのものより答えを出すまでの過程に意味があるのかもしれないと思ったりもします。
「これで間違いなし」と出した答えがまたたくまに変容していくような、そんな時代です。わたしたちは、だから、絶えず考え続けながら生きていかなければならないのだと思います。
楽なことではありませんし、それでもなお間違うこともあるのでしょうが、あきらめずにあせらずに行きましょう。こわいのは、わたしもあなたも一緒です。

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