人生は馬鹿みたいに甘くない。 だからこそ、なにげない日常をもっと味わい尽そう。 中島京子 著 中央公論新社/本体580円+税
1964年東京生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒。出版社勤務、フリーライターを経て2003年に小説『FUTON』でデビュー。10年に『小さいおうち』で直木賞、15年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、20年『夢見る帝国図書館』で紫式部文学賞受賞。
『花桃実桃』をプッシュ1stに選んでいただいて、とても嬉しいです。 43歳、独身女性の花村茜さんが、死んだお父さんから相続したアパートの大家に転身、日々、すっとこどっこいなアパートの住人と格闘するという物語です。 じつは、花村茜さんという、この主人公は、作者の偏愛する作中人物で、いろんな小説を書いてきた中でも、一、二、三くらいは争う、愛おしいキャラクターです。 だいたい、小説を書いていると人物は勝手にいろんなことを言ったりやったりしはじめるものなのですが、書き始めたときは、わたしは茜さんが元ヤンだということを知りませんでしたし、案外、恋愛経験が豊富であることも知りませんでした。ただ、ちょっと古いことわざとか、俳句や短歌が好きで、だけど非常に独自の解釈をしてしまう、おっちょこちょいの人物、くらいの設定にしてあったのです。でも、書き始めたら、昔は「袴みたいなスカート穿いて、眉剃ってた」なんてことが、知らぬ間に設定にもぐりこんできたのです。びっくりしました。 ヘンテコな住人たちに囲まれて、でも、自分を失わず、誰にも気さくに公平に接する、とても素直な茜さんが、わたしは好きです。現実にいたら、友だちになりたいです。 みなさんがこの本を読んで、心の中に花村茜という新しい友だちを作ってくださったら、作者としてこれほどうれしいことはありません。楽しんで読んでいただけたら幸いです。
著者 中島京子
『花桃実桃』はほのぼのユーモラスな小説なので、いつ読んでも楽しいですが、物事がどうもうまくいかないな、という気分のときにもおすすめです。 主人公・花村茜は40代に入って仕事をなくし、家族もおらず、古びたアパートに転居することになり……と、ちょっと冴えない状況にあるのですが、物語のなかで彼女はとても「モテて」います。老若男女が寄ってきては、なんだかんだ彼女と関わりたがるのが面白いのです。 素っ頓狂な行動に出る茜さんに目を丸くしたり、くすくす笑ったりするうちに、気持ちが軽くなって、人生の後半戦もけっこう面白かもしれないぞ、と思えてくる。そんな「穏やかな効き目」を感じられる作品です。どうぞ気軽にページを開いてみてください。
中央公論新社 文芸編集部 横田朋音
2020年9月23日(水)~11月3日(火・祝)まで
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【著者】および【編集者】のコメント
『花桃実桃』をプッシュ1stに選んでいただいて、とても嬉しいです。
43歳、独身女性の花村茜さんが、死んだお父さんから相続したアパートの大家に転身、日々、すっとこどっこいなアパートの住人と格闘するという物語です。
じつは、花村茜さんという、この主人公は、作者の偏愛する作中人物で、いろんな小説を書いてきた中でも、一、二、三くらいは争う、愛おしいキャラクターです。
だいたい、小説を書いていると人物は勝手にいろんなことを言ったりやったりしはじめるものなのですが、書き始めたときは、わたしは茜さんが元ヤンだということを知りませんでしたし、案外、恋愛経験が豊富であることも知りませんでした。ただ、ちょっと古いことわざとか、俳句や短歌が好きで、だけど非常に独自の解釈をしてしまう、おっちょこちょいの人物、くらいの設定にしてあったのです。でも、書き始めたら、昔は「袴みたいなスカート穿いて、眉剃ってた」なんてことが、知らぬ間に設定にもぐりこんできたのです。びっくりしました。
ヘンテコな住人たちに囲まれて、でも、自分を失わず、誰にも気さくに公平に接する、とても素直な茜さんが、わたしは好きです。現実にいたら、友だちになりたいです。
みなさんがこの本を読んで、心の中に花村茜という新しい友だちを作ってくださったら、作者としてこれほどうれしいことはありません。楽しんで読んでいただけたら幸いです。
著者 中島京子
『花桃実桃』はほのぼのユーモラスな小説なので、いつ読んでも楽しいですが、物事がどうもうまくいかないな、という気分のときにもおすすめです。
主人公・花村茜は40代に入って仕事をなくし、家族もおらず、古びたアパートに転居することになり……と、ちょっと冴えない状況にあるのですが、物語のなかで彼女はとても「モテて」います。老若男女が寄ってきては、なんだかんだ彼女と関わりたがるのが面白いのです。
素っ頓狂な行動に出る茜さんに目を丸くしたり、くすくす笑ったりするうちに、気持ちが軽くなって、人生の後半戦もけっこう面白かもしれないぞ、と思えてくる。そんな「穏やかな効き目」を感じられる作品です。どうぞ気軽にページを開いてみてください。
中央公論新社 文芸編集部 横田朋音