長い夜を抜けて、
想いはここに集まる。
それが家族なんだ。
新たな一歩を踏み出させてくれる
感動作。
伊吹有喜著
文藝春秋/本体880円+税
1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。2008年『風待ちのひと』(「夏の終わりのトラヴィアータ」より改題)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、デビュー。『四十九日のレシピ』は、11年にドラマ化、13年に映画化された。本作『ミッドナイト・バス』は第27回山本周五郎賞、第151回直木賞の候補作となり、18年に映画化。『彼方の友へ』は第158回直木賞、第39回吉川英治新人文学賞の候補となる。他の著書に『カンパニー』、『BAR追分』シリーズなどがある。
写真撮影:下林彩子
【著者】伊吹 有喜さんのコメント
このたびは「PUSHぱ1st.」に選出していただき、ありがとうございます。
ブックファーストにお越しの多くのお客様と出会えますこと、とてもうれしいです。
「ミッドナイト・バス」は高速路線バスの深夜便を担当する運転士、高宮利一と彼の家族の物語を軸に、利一が運転するバスの乗客の物語が交差する作品です。
登場する乗客は身内の介護や旅行、仕事、大切な人に会いにいったり、別れたりと、さまざまな事情を抱えて地方から東京へ、あるいは東京から地方へ向かいます。
舞台になるのはおいしいお米とお酒がある新潟市と、その近郊にあるという設定の「美越」。
東京と新潟を結ぶ路線の物語ですが、大都市にお住まいの方、そして長距離バスの深夜便がある町とご縁がある方にとって、身近で共通する事情があると思います。
この深夜高速バスの利点はリーズナブルに移動ができること、そして夜明けとともに目的地に到着できること。夜を徹して走ることで浮いた時間と旅費を目的地にいる大切な人や、情熱を傾けるもののために注いで、人生を前に進めていけるのです。
年齢も環境もまるで違う人たちがほんの数時間、一台のバスに乗り合わせ、それぞれの「夜」を越えていく――。
この作品は乗客だけではなく、作者の私もさまざまなところへ運び、多くの方々とめぐりあわせてくれました。私もまた、利一のバスの乗客の一人という気がします。
夜明けに向かって走っていく人たちの物語「ミッドナイト・バス」。
よかったらぜひ、お手にとってみてください。