罪と贖罪。償いと赦し。
現代社会の闇を深くえぐる――。
大門 剛明 著
中央公論新社/本体720円+税
1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。第29回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞した『雪冤』で2009年デビュー。近著に「『テミスの求刑』(中央公論新社)、『不協和音 京都、刑事と検事の事件手帳』(PHP研究所)などがある。
スピーディーでサスペンスフル!
二転三転する展開に振り回される快感!!
木内 一裕 著
講談社/本体600円+税
1960年福岡生まれ。1983年『BE-BOP HIGHSCHOOL』で漫画家デビュー。2004年、初の小説『藁の楯』(講談社文庫)を上梓。同書は'13年に映画化もされた。最新刊は『嘘ですけど、なにか?』(講談社)。
絶対に失敗しない誘拐とは?
そんな発想から『デッドボール』は始まりました。皆さんご存じ漫画『BE-BOP HIGHSCHOOL』著者である木内一裕さんの小説の魅力は「想像を絶するほどのリアリティとスピード感」です。そしていま、最も注目される作家・木内さんの魅力がギュッと詰まった作品、それが『デッドボール』です。
「この先の展開、常人だったら絶対に考えつくはずない……!」と思うような展開も、あっと驚く登場人物たちの行動によって鮮やかに飛び越えていきます。木内さんは、我々編集者には一章が書き上がるごとに原稿を渡してくださるのですが、いつも「早く続きが読みたいです!」とお伝えしています。純粋に読者として、まったく続きが読めないからです。次の章が書き上がるまでの数週間、私たちは好きな連載漫画や小説の続きを待ちきれず、次号の雑誌の発売を指折り数えていた子どもの頃の気持ちを思い出すのです。そして、何よりの魅力は、登場人物たちのキャラクターです。主人公のノボル(『BE-BOP HIGHSCHOOL』がお好きな方はピンとくる名前かもしれません)は彼女もいないし、仕事もない。ちょっと頼りのない若者ですが、この彼がとてつもなく強烈な男たちと出会うことで少しずつ成長していきます。私個人の好きなキャラクターは、ノボルの前に立ちはだかる最強で最悪の敵、成宮です。どんなキャラクターなのか、ぜひご自身の目で確かめてください。すべての登場人物に感情移入ができる、これが木内作品の魅力なのです。
そこで話は戻りますが、皆さん、「絶対に失敗しない誘拐」とはどんな犯罪だと思われますか?
もしこの回答がすんなり出てきたら、あなたは最強の犯罪者になれるかもしれません。あっと驚く正解は、ぜひ『デッドボール』で確認してください!
中央公論新社 文芸局第二編集部 金森 航平さんのコメント
「うわー、今まで読んでなかったの、完全に損してた」
本作を読み終えた後、私は茫然としながらそう呟いたのを憶えています。
大門剛明さんの作品を、読んだことはおありでしょうか?恥ずかしながら私は入社一年目のときに、まだ単行本だった本作を手に取ったのが初めてでした。学生時代には、それなりに本を読んできたつもりでいたのですが、そんな私の鼻っ柱を、この作品は一撃で粉々にしていきました。それほどまでに鮮烈で、衝撃的な一冊です。
舞台は石川県にある小さな町。更正保護施設(少年院や刑務所を出た人が生活する施設)に、過去に強盗殺人を犯した男・久保島が入所することになります。自らの欲のために人を殺したとは思えない彼の誠実さに、主人公のさくらは惹かれていきます。やがてさくらだけではなく、他の職員や寮生たち、久保島が殺した男の遺族までもが、彼を慕うように。しかしそんな中、町内で殺人事件が発生。疑いの目は寮生たち、そして久保島にも向いていきます。ここまで読んだ方は「こんな誠実な人が、また人を殺すわけがない!」と叫びたくなるでしょう。ですがその完璧なまでの人柄が、逆に怪しくも思えてくるのです……。
「人は本当に更正することができるのか」。これが、この作品を通したテーマです。そして読者は「更正したはずの人を本当に信じることができるのか」ということを、久保島という存在を通じて、試されることになります。
クライマックスに告解室(罪を懺悔する小さな部屋)で語られるのは、あまりに衝撃的な事実。久保島を信じ抜くさくらを待ち受けるのは、絶望か、希望か――きっと驚愕します!
WOWOWで連続ドラマ化した『テミスの求刑』をはじめ、『雪冤』、『レアケース』など映像化作品が相次ぐ社会派ミステリの名手・大門剛明さん。
まだ読んでいない方は、もしかしたら損をしているかも……?
驚愕必至の大門ワールドの入口に、ぜひ本書を!