打海 文三 著 KADOKAWA/本体 840円 + 税
『ハルビン・カフェ』は、第5回大藪春彦賞を受賞し 現代ハードボイルドの理想を実現したと賞賛された傑作です。 近未来の日本の架空都市を舞台に、多視点でいくつものドラマと時代を行き来しながら、ひとりの人物の実像と大きな事件の核心に迫っていきます。 ここで描かれているのは、人間の持つ負の感情―猜疑心・嫉妬心・虚栄心・恐怖心―や、欲望の深さ、 まさに業というべきものです。打海さんは登場人物たちを徹底的に追い詰めることで、同じ過ちを何度も繰り返す、歴史から学ぶことのできない人間の存在そのものを、追及しようとしていたように思います。 障害児の誘拐事件という形をとって・・・書かれた『時には懺悔を』や、内戦状態となった日本で少年少女が生き抜いてく様を描いた『裸者と裸者』から始まる3部作も、打海さんの目線は、常に、すべてを受け入れてどう向き合うか、というもの。すべてを受けいれるということは、すべてを捨てるということでもあり、とても勇気が必要ですが、打海さんは、そういう勇気を作品を通してたくさん教えてくれていたと感じます。 打海さんは、2007年10月に59歳の若さで亡くなられました。 決して多作ではありませんでしたが、『ハルビン・カフェ』だけでなく、遺されたどの作品もお勧めです。機会があればぜひ読んでみてください。
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『ハルビン・カフェ』は、第5回大藪春彦賞を受賞し 現代ハードボイルドの理想を実現したと賞賛された傑作です。
近未来の日本の架空都市を舞台に、多視点でいくつものドラマと時代を行き来しながら、ひとりの人物の実像と大きな事件の核心に迫っていきます。
ここで描かれているのは、人間の持つ負の感情―猜疑心・嫉妬心・虚栄心・恐怖心―や、欲望の深さ、 まさに業というべきものです。打海さんは登場人物たちを徹底的に追い詰めることで、同じ過ちを何度も繰り返す、歴史から学ぶことのできない人間の存在そのものを、追及しようとしていたように思います。
障害児の誘拐事件という形をとって・・・書かれた『時には懺悔を』や、内戦状態となった日本で少年少女が生き抜いてく様を描いた『裸者と裸者』から始まる3部作も、打海さんの目線は、常に、すべてを受け入れてどう向き合うか、というもの。すべてを受けいれるということは、すべてを捨てるということでもあり、とても勇気が必要ですが、打海さんは、そういう勇気を作品を通してたくさん教えてくれていたと感じます。
打海さんは、2007年10月に59歳の若さで亡くなられました。
決して多作ではありませんでしたが、『ハルビン・カフェ』だけでなく、遺されたどの作品もお勧めです。機会があればぜひ読んでみてください。